痛風の原因となる関節液中の尿酸結晶構造
の反磁性リアレンジメント
挑戦的萌芽研究

人体内で進行する結晶化は、骨形成のような望ましいプロセスがある一方、痛風などに伴う結晶化プロセスが存在する。われわれはこれまで、痛風の関連物質のひとつである尿酸の微結晶の磁気応答を調べ、その痛風治療への応用の可能性を議論してきた。結晶化した尿酸結晶の一種は、平板上の形状を形成し、その平板面が数百ミリテスラの磁場に対し、垂直に配列するような方向へ回転する挙動がみられている

このような磁気挙動は、全ての物質が有する反磁性という分子内の電子の局在した領域での外部磁場を低減しようとする量子磁気化学的効果によるものである。分子骨格に対する電子雲の形状異方性によって、磁場下で分子が安定する方向が最低エネルギー状態へ推移する結果、磁場下でその分子が好み配向方向が選ばれると比喩できる。
 これまで、固体からソフトマターまで、さまざまな物質の強磁場効果が報告されてきた。その中でマイクロメートルスケールの微小物体の磁場配向は、磁場下での顕微観察がなされるようになって詳細に調べることが可能となった。

 尿酸結晶の磁気応答の解明のためには、尿酸分子と類似した分子構造をもつグアニン結晶(魚類の色素胞から得られる)が、人体内痛風誘因結晶のモデルとして有用であることに、我々は注目してきた。
 これまで、グアニン結晶の磁場下での光反射を計測する手法を展開させ2015年度には、痛風のモデル物質である魚類体表のグアニン結晶において、結晶面に対する光入射方向によって光反射強度が劇的に変化することを発見した(研究成果1:Langmuir 2016, Iwasaka et al.)。
 この光反射の結晶面における異方性は、尿酸結晶のマクロ構造にも適用可能であり、現在、その計測データを蓄積中である。

 また、尿酸分子と類似した形状のグアニン分子の結晶を体表に持つ深海魚の(ヨコエソ)の体表面に注目し、その体表でのグアニン結晶の配列パターンに対する磁場効果観測を2016年5月から開始し、その成果を2016年11月に国際磁気および磁性材料会議(USA, New Orleans)で行った。
 ここでは、塩基性水溶液をこの魚の体表に塗布し、結晶の溶解状態を磁場の有無で比較している。

 人工的に再結晶化した尿酸結晶の溶解プロセスに及ぼす、磁場下での結晶振動の影響のプレリミナルな観察も行っている。

研究成果1
Magnetic Control of the Light Reflection Anisotropy in a Biogenic Guanine Microcrystal Platelet

Masakazu Iwasaka, Yuri Mizukawa, and Nicholas W. Roberts
Langmuir, 2016, 32 (1), pp 180–187
DOI: 10.1021/acs.langmuir.5b03522
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.langmuir.5b03522


この論文のデータの最終検証および尿酸分子での類似
現象チェックに挑戦的萌芽研究での支援を活用させて
頂いています。

痛風の原因となる関節液中の尿酸結晶構造の反磁性リアレンジメント